116:名無しNIPPER[saga]
2017/11/14(火) 06:10:40.98 ID:OiSFZpw30
私の名前はサンディ。名前だけしか持たない奴隷。
遠い昔にどこかの港町で母と暮らしていたような気がする。
以前の記憶は曖昧で、全ての事柄に薄ぼんやりとした霧がかかっているみたいだが、
私自身としては振り返るつもりが毛頭ない。
どこで、何をして、どんな事をされてきたのか、
思い出しそうになると凄まじい嘔吐感を覚え、腕の皮膚を搔きむしりたくなってくる。
だから昔は思い出さない事にした。
綺麗だった母の顔も、もしかしたら居たかも知れない友人も、あの懐かしい磯の香りも。
それはきっと。
逃げる事すら許されなかった私の脳内で生まれた、愚かな幻。
きっと実際は暗い橋の下あたりで拾われて今に至るのだろう。
一番鮮明な記憶は、鞭を振るわれた背中の痛み。
人生で残せてきたのは、体に刻まれた醜い傷跡だけ。
幸せの意味さえよく分からないまま、ずっと長いあいだ虐げられてきた。
日本へ売り飛ばされる際に乗ってきた船で、あの人に出会うまでは。
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