7: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:10:53.06 ID:s1IKgLXf0
*
「プロデューサーさん、お願いします! ありさに、このオーディションを受けさせてください!」
8: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:11:44.24 ID:s1IKgLXf0
「亜利沙、オーディションの参加者が決まったみたいだ。目を通しておいてくれ」
プロデューサーさんからの連絡に、すぐさま反応する。
戦いは始まる前から勝敗が決している、なんて言葉があるくらいだから、リサーチは基本中の基本のはずだ。
9: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:12:47.97 ID:s1IKgLXf0
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うつら、うつら。……がたんっ。
10: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:14:56.41 ID:s1IKgLXf0
日を追うごとにレッスンは過酷になってきていた。
だけどそれは別にオーディションのために特訓している、というわけでもなくて、公演へ向けた、ありさの曲を歌い踊れるようになるためのレッスンに過ぎないのだ。
求められているものはとても高い水準だった。
指先まで意識を集中させて、なんて言葉は何度も聞いてきたけど、それがこんなに大変だってことを知ったのはごく最近だ。
11: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:15:50.73 ID:s1IKgLXf0
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「ん、んぅ……ふわぁ…………」
12: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:17:15.80 ID:s1IKgLXf0
早々と学校に欠席の連絡を入れたまではよかったけど、プロデューサーさんにも伝えなくちゃと思うと、ひどく気が重かった。
この大事な時期に何もせずに休んでいなきゃいけないなんて、そんなの許されるはずがない。許されるはずがないけど、どうしようもないのだ。
メールを打ち込む。
熱を出したからお休みする……それだけのことを伝えれば十分なはずなのに、画面に触れるか触れないかのところで指は完全に止まっていた。
13: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:17:58.60 ID:s1IKgLXf0
「……まだ、残ってるかなぁ」
もぞりと布団を抜け出して、勉強机を漁ってみる。引き出しの中に大事にしまわれたそれは、すぐに見つかった。
大学ノートの下には学習帳、その下には自由帳、さらに奥底には、コピー紙をリボンで束ねたような紙束まで。
14: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:18:45.04 ID:s1IKgLXf0
*
結局、学校とレッスンはまるまる二日ほど休んでしまった。
もどかしい気持ちはあったけど、この二日間がなくちゃ見つからなかったものもあるってことは、ありさが一番わかっている。
15: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:19:37.24 ID:s1IKgLXf0
胸のドキドキを残したままオーディション会場に辿り着いて、その始まりを待っている。
周りにいるのはありさよりも実績と経験のあるアイドルちゃんたち。その一人一人が、ステージとは全く違った真剣さをはらんだ面持ちでじっと前を見つめている。
あんなに天真爛漫に見えたスパーク☆めいでんちゃんでさえ、大ファンのありさが初めて見る表情をしているのだ。
「…………ムフフ」
16: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:22:48.11 ID:s1IKgLXf0
音楽が始まってすぐに後ろへステップを踏む。
目立つことを考えるなら間違いなくマイナスの一手だけど、これで思い思いに立ち位置を決め、アピールの機会を伺うアイドルちゃんたちの動きに合わせられる。
ライバルのアイドルちゃんたちが一番得意で、一番自信を持ってるキメのアピールとその立ち位置。
何よりも魅力的な瞬間は全部、ありさの目と耳が覚えている。
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