高垣楓「純情な恋する乙女なんて如何でしょうか?」
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32: ◆TDuorh6/aM[saga]
2017/10/18(水) 19:42:21.74 ID:nmXeqSyFO



「さて、そろそろ出ましょうか」

「ですね、行きましょう」

 自動ドアをくぐれば、一気に冷たい空気が流れ込んできた。
 まだ十月だと言うのに寒すぎじゃないだろうか。

「それでは、失礼します」

 楓さんが、俺の折り畳み傘に入り込んできた。
 距離が近すぎるどころか殆ど密着しているが、傘が小さいのだから仕方のない事だろう。
 濡れて風邪をひくよりはよっぽどマシだ。

「相合い傘って良いですね……学生の頃からの夢でした」

「はいはい、行きますよ楓さん」

 二人並んで事務所を出る。
 雨の匂いだけでなく少し甘い香りがしたが、そっちには意識を向けないようにする努力を怠らない。
 時折触れる彼女の髪がサラサラしてるとか、それも考えないようにする。
 願わくば心臓バックバクな事が伝わりませんように。

「……月が、綺麗ですね」

「雨降ってて月見えませんけど」

「……むーん、ツキがありませんね」

 下らないやりとりが、この上なく心地よい。
 ずっとずっと、続けていたくなる。




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