3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/10/08(日) 16:45:21.47 ID:MlpcfRuf0
静かにそっと、壊れ物を扱うような繊細さで頬を何度も撫でられる。
胸は胸。腹は腹。足は足。それぞれ互いの同じ部分を重ねて……顔も、吐息が混ざり合うくらいのすぐ傍へと重ねながら。
撫でられる。何度も何度も。交わした視線は結んだまま。
「もう駄目」
「あなたにはきっと未来があった。幾つもの煌めく未来が」
「でも駄目。もう駄目。それはもう台無しになった」
「あなたの未来には私がいる」
「……それは、きっと選ばれない。あなたの周りにはたくさんの人がいる。数えきれないほどの人。あの聖女だって」
「だからきっと選ばれない。私の願いは叶わない。……けれど」
途切れず言葉が降り注ぐ。
普段とは違う彼女の、普段は口にしないような言葉。
彼女の言葉。……硝子で造られた小瓶の底、そこへ小さく刻まれていた文字を信じるのなら……普段は秘めている想いを隠さず乗せた、本心からの素直な言葉。
それが注ぐ。僕へと向けて彼女の口から。
「望んでしまった。あなたを想って願ってしまった」
「選ばれなくても関係ない。たとえあなたが誰を選ぼうと……このカルデアの誰か、私の知らない誰か、あの聖女のことを選ぼうと関係ない。私は望む。想う願う」
「だから駄目。手遅れなのよ。あなたが私を選ばなくても、あなたは私から逃れられない。あなたの未来には私の影が差し込むの」
「もうあなたは、私に台無しにされるしかないのよ」
添えられる手が二つに増える。
それまで胸元を押さえつけるようにしていた手も頬へ伸びて、両方共を撫でられる。
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