ジャンヌ・オルタ「台無しにしてあげます」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/10/08(日) 16:43:57.12 ID:MlpcfRuf0
 開いて晒した口の中へ生温い水が注がれる。

 透き通るようだったはず。けれど今は半分濁った粘り気のあるそれ。一度彼女の中で泡立てられたその水が、僕の中へと入ってくる。

 初めはだらだら、と。握った拳を一つ間へと置いたくらいの距離、それを開けた上から垂らされて注がれて。やがて直接、唇を重ねながら送られる。


「ん、……ふ、はっ……」

「……ふ、ふふ」


 ごくんごくん、と注がれた水を飲み込む。そうして口の中を空ける度、次を次をと注がれて。それを数分。息を荒げながら胸を上下させる僕の唇へ最後に一度舌を這わせて舐め上げてから、それからやっと離れた彼女が笑みを零す。

 僕と同じく整わない吐息を漏らしながら、満足そうにうっとりと。


「台無しね」

「せっかくあなたが仕立てたドレスも、綺麗で美しい花の束も、甘美に澄んだこの水も」

「あなたの唇も」

「台無し。全部全部台無しよ」

「私に破られて私に散らされて。私に汚されて私に奪われた」

「台無し」

「あなたはもう、私で全部台無しなの」


 真白な頬へかすかな紅色を差し入れて、今にも涙が溢れてしまいそうなほど潤んだ瞳で。そんな、普段と違う彼女に言葉を尽くされる。

 普段と違う。少し前……今この部屋のどこかに転がっているのだろう小瓶、その中身を飲み干してから変わってしまった彼女。普段にはない言動、行動を起こす今この彼女に。


「可哀想な人」

「何もかもを穢されて……踏みにじられて……台無しにされて……」

「可哀想。私のせいで」

「私を喚んでしまった。私を傍へ置いて、私を許してしまったせいで」

「私に、想われてしまったせいで」

「可哀想。本当に、可哀想」


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