1: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:28:54.11 ID:TzvX0Up20
===
人間、柄にもないことするもんじゃない。
それと思いつきだけで行動するのもできれば止めておくべきだ。
金無いだらしない意地汚い、おまけにワガママ自分勝手。
日頃からダメ人間としての醜聞を、あらかた欲しいままにしているこの俺がだ。
ちょっとした気まぐれの結果として、こんな窮地に立たされてる。
「プロデューサー、私……!」
ああ、ああ! そんなに感極まっちゃって。
涙なんかも流しちゃって。
流石の俺にもこれは分かる。
確実に、今目の前にいるこの少女が取り返しのつかない
判断ミスを下した事が……そう! 言わずもがなさ、人生の!
「驚い……てます。でも、それと同じぐらいに嬉しくて……! どうしよう、うまく言葉が出てこない……」
そう言って、琴葉は涙も拭かずに微笑んだ。
その健気で儚い微笑みに、俺の良心がズキズキと痛む。
ああ全く、どうしてこんないい子なのに、人を見る目が無いんだか……。
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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:36:19.09 ID:TzvX0Up20
===1.
事のきっかけは数日前。いつも仕事でお世話になっている、とある知り合いに呼び出されたのが始まりだった。
待ち合わせ場所のカフェにつくと、周りは若い女の子だらけ。
3: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:38:01.53 ID:TzvX0Up20
「いいじゃない。君の好みは知ってるつもりよ」
手の甲にちょんと顎を乗せて、ニコリと笑う小窯さん。
4: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:41:22.21 ID:TzvX0Up20
「あー……その、見事に四角い箱ですね」
「中身はもっと驚くわよ?」
5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:43:23.79 ID:TzvX0Up20
「今度の新作を持って来たの。日本じゃまだ発売してないんだけど、
正真正銘『OGAMA』ブランド、リースモチーフの指輪よ指輪!」
あ、やっぱり? リースが元になってんのね……とはいえ。
6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:45:38.07 ID:TzvX0Up20
===2.
「ノーサンキューですプロデューサー」
「待って、まだ指輪を見せただけじゃないか」
7: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:47:42.93 ID:TzvX0Up20
「そんなつれないこと言わないで、ただ貰っちゃえばいいだけなんだしさ」
するとロコは困ったような顔をこちらに向け。
8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:50:47.63 ID:TzvX0Up20
「それに、その作品からインスピレーションは受けましたし……ロコはそれだけで十分なの」
「……はいはい、大人の御意見で」
9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:52:50.72 ID:TzvX0Up20
===3.
――んでだ。
『でも返されたって困るのよねぇ。私の指には入らないし』
10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:54:54.35 ID:TzvX0Up20
「今日は何の日? 言ってみなさい」
「今日? 世界教師デー」
11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 19:59:25.56 ID:TzvX0Up20
「アンタ、その顔ちょっと待って」
「な、なんだよ伊織? 言いたそうだな」
12: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:02:38.15 ID:TzvX0Up20
「アンタが服をプレゼントするのは分かったけど、別に小物をあげても構わないのよ?」
「小物?」
13: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:04:32.27 ID:TzvX0Up20
さらにそれから十数分、口論は激しく続いたのだ。
すると最終的には伊織も折れて
「だったら何か一つぐらい、キチンとしたもの渡したら」なんてこっちの意見も聞いてくれた。
14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:05:47.47 ID:TzvX0Up20
「アンタみたいな人間がね、付き合ってる子全員におんなじ贈り物を用意しちゃって後から物凄い修羅場――あ、しまった」
「なに?」
15: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:08:21.03 ID:TzvX0Up20
===4.
そして、話は冒頭に繋がるのだ。
「驚い……てます。でも、それと同じぐらいに嬉しくて……! どうしよう、うまく言葉が出てこないや……」
16: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:11:51.77 ID:TzvX0Up20
「プロデューサー」
「ん、なに?」
17: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:13:25.17 ID:TzvX0Up20
===
……でもま、そんなどうにもこうにものぼせ上がってた俺たちを、
夜風がすっかり冷ますまでにそれ程時間はいらなかった。
18: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:15:22.27 ID:TzvX0Up20
「なぁ琴葉」
「は、はい!」
19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:17:18.07 ID:TzvX0Up20
すると琴葉は、一瞬きょとんとした顔になって。
「プロデューサー? ……リースに込められた願いは、魔除けだけじゃないですよ」
20: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:20:28.50 ID:TzvX0Up20
「……そうですか? プロデューサーが、忘れすぎてるだけの気もしますけど」
そう言って笑った琴葉の顔は、どこか「仕方ないな」って感じの笑顔だったけど。
なんとなく……そう、なんとなく。二人の間の距離感は、いつも通りのゆるーい感じに戻っていて。
21: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2017/10/05(木) 20:22:52.35 ID:TzvX0Up20
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以上おしまい。琴葉誕生日おめでとう! …にしても、今年のプレゼントは何をあげたか不明って。
では、お読みいただきありがとうございました。
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