15: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/05(木) 20:08:21.03 ID:TzvX0Up20
===4.
そして、話は冒頭に繋がるのだ。
「驚い……てます。でも、それと同じぐらいに嬉しくて……! どうしよう、うまく言葉が出てこないや……」
そうだな琴葉、実のところ……俺もおんなじ気持ちだよ。
今置かれているこの状況を、なるべく言葉にしたくない!
指輪を渡して嬉しいと、喜んでもらうのは想定内。
だが嬉しいと、泣き出されるのは正直こっちの想定外。
「……パーティが終わって、事務所の屋上に呼び出されて……。こっそり渡されたプレゼントが、こんなに素敵な指輪なんて」
「うん、まぁ、恥ずかしいしな。他の連中に見られると」
「私、す、すぐには答えられませんけど……い、一生、大事にしますっ!」
「あ、そう? それだけ喜んでもらえると、俺も渡した甲斐があるってもんで……」
穏やかな月明りと街灯りが、逢引きと洒落込む夜の屋上で。
琴葉は宝石箱を目線の高さに掲げると、改めて指輪をじっくり眺め出した。
涙はまだ、止まってない。
キラリと光を反射するその輝きの元は指輪なんだか涙なんだか。
とにかく、その……横顔が、
闇色のベールに包まれたようにぼやけて見えたものだから。
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