42: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:34:06.93 ID:r5zFZECu0
「私が、アイドルに、ですか?」
口をぽかんと開けて、彼女が尋ねてきた。
「はい」
43: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:35:18.11 ID:r5zFZECu0
下世話な話だけど、アイドルだって職業である以上、仕事ぶりに応じて給料を得ることができる。
彼女がトップアイドルとして活躍できるようになれば、時間をかければ教会を立て直すことも不可能じゃない。
44: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:36:15.22 ID:r5zFZECu0
彼女はくちびるを強く結んで、真剣な表情を浮かべている。
じっと、なにかを考え込んでいる様子だった。
45: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:38:14.89 ID:r5zFZECu0
「私を育てていただいた、大切な場所です」
決して言葉の調子は強くはなかったが、はっきりとした輪郭を帯びていた。
46: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:39:30.22 ID:r5zFZECu0
「お尋ねしても構いませんか」
花弁に触れるような、慎重な言い方だった。
緊張を覚えつつ頷く。
47: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:40:50.89 ID:r5zFZECu0
「あなたの笑顔と歌声に、とても美しい輝きを見つけたからです」
48: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:43:35.95 ID:r5zFZECu0
理由なんて、本当にシンプルだった。
どんなに手練手管を弄して、いくら着飾った言葉を使うよりも、思ったままに伝える方が良いと思った。
「そこに、なにも誤魔化すことのできない魅力を感じたからです」
49: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:44:40.99 ID:r5zFZECu0
「確証と呼べるものは、ありません」
自分の言葉を少しずつたしかめながら、ゆっくりと話す。
50: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:48:59.28 ID:r5zFZECu0
「とりわけあなたの歌は素晴らしい。本当に、本当に、僕は感動しました」
「人を幸せにする力が備わっていると、心の底から思います」
51: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:50:18.12 ID:r5zFZECu0
彼女は俯いてしまって、それから暫く言葉を返さなくなった。
首元のブローチが揺れている。
その姿はどうしてだか、祈っているようにも見えた。
52: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:50:55.75 ID:r5zFZECu0
それから数日が経過した朝のことだった。
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