39: ◆hAKnaa5i0.[saga]
2017/09/29(金) 18:09:42.11 ID:4lJng8t70
(「キミのヌオーはカントーにはいないポケモンでね。どうだい? 私のサンダースと交換しないかい?」)
ゴロウはあの申し出を断っていた。
交換という行為は、決してポケモンへの裏切りではない。
どうしてもポケモンにもトレーナーにも個性がある。
合う、合わない。すなわち、相性というものは存在する。
ポケモンを他人に譲り渡すことは「悲劇」ではないのだ。
ゴロウはそう本で読んだことがあった。その考えは正しい。納得できた。
ただ、ヌオーを交換に出すことを考えると苦しくなった。もやもやした。
ちゃんとした説明をすることはできない。
ただ、彼にとって「交換」は受け入れがたいことだったのだ。
ゴロウは倒れたヌオーをボールに戻した。
「よく頑張ってくれたな」
その日、ゴロウの集中力が途切れることはなかった。
ジムリーダーとの戦いでもなかった感覚だ。
はたから見て、ゴロウの指示は最適なものとは言えなかった。
しかし、ゴロウの気迫はポケモンたちに伝わった。
彼らはゴロウの指示を信じた。結果的にそれが功を成した。
「ヌオー! 一歩踏み込んで、『れいとうパンチ』!」
「慌てるな! 確実に一発当てろ!」
「スピアー! 『どくづき』を当てたら『おいかぜ』!」
「いったん、距離を取って『ダブルニードル』だ!」
会場の誰もがバトルの行方を見守っていた。
ゴロウの知人は手に汗をかき、拳を握りしめていた。
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