96: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/27(金) 18:49:52.42 ID:23i0x2er0
「勘弁してください! 俺は別に肩もみで小遣い稼ぎなんて――」
「星梨花ちゃんのね」
「ぐっ!?」
「納得させるのがすっごく大変だったのよ。……お陰で肩が凝っちゃって」
言って、彼女は自分の肩をしんどそうにトントンとこれ見よがしに叩いて見せた。
この時、俺には二つの選択肢が与えられたことになる。
一つはこのまま順番通りにこのみさんの肩も揉みほぐすという無難な物。
二つ目はこの場から今すぐ逃げ出して、"軟弱者"のレッテルを彼女から頂戴する物だ。
だがしかし! 今日のところに限っては悩める俺のすぐそばに救いの女神が存在した。
「あ、だったら私が揉みますよ」
そう! 女神、歌織さんが!
「えっ……いいの、歌織ちゃん?」
「勿論です! さぁどうぞ、私の前に来てください」
優しく彼女に促され、このみさんが歌織さんの前に椅子ごと場所を移動する。
すると歌織さんがこのみさんの肩を揉み、その歌織さんの肩を俺が揉むという奇妙な構図が出来上がる。
「あ、ああ゛〜……いいわぁ。歌織ちゃん肩揉み上手ねぇ……!」
「そうですか? よく、父の肩を揉んでいて……んっ!」
「あ! す、すみません。力、入れ過ぎちゃいましたか?」
「いえ、そんなことは。……プロデューサーさんもお上手ですよね、肩揉み」
「ははは……昔、まだ事務所の仕事が少なかった頃は社長の肩ばっかり揉んでましたから」
「あらそうなの? プロデューサーの過去話、私ちょっと気になるかも」
「このみさんもですか? ……実は私も」
「えぇー? でも、そんな面白い話でもないですよぉ」
「この際だからいいじゃないの! これは、年上命令よ♪」
そうして俺の昔話をBGMに、この一種異様な肩揉み空間はしばらく活動を続けたが――。
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