93: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/27(金) 18:46:03.90 ID:23i0x2er0
落ち着いて思い返してみれば、きっとこの一言が余計だったんだ。
どんなお願いが飛び出すのかと身構えている俺に向けて、歌織さんがもじもじしながら口にしたのは――。
「私のことを、"お姉ちゃん"って呼んでみてもらってもいいですか?」
「は、はぁ……!?」
「以前から思ってたんですけど、プロデューサーさんって少し子供っぽいところがあるじゃないですか。
……それで私、弟がいたらもしかして、こんな感じなのかもしれないなって」
「だからって、えぇっと……俺が代わりに?」
「やっぱりダメでしょうか? ……ぴ、Pちゃん……!」
その瞬間、俺はまさに「はうあっ!!?」って感じで驚いた。
なんたってあの歌織さんが、頬を赤らめながら俺に"Pちゃん"って……。
そして期待に満ち満ちた瞳でこっちを見上げるんだもの。
もしもこれこれで断るような奴がいるならば、そいつはただのヘタレと言っても過言じゃない!
俺は緊張に震える拳を握りなおすと意を決し。
「じゃ、じゃあ……か、歌織姉さん」
「……少し、距離を感じます」
「なら……お、お姉さん」
「家族から他人になった気が」
「うぅ〜……姉さん」
「プロデューサーさん。私、"お姉ちゃん"と呼んでもらいたいって」
「……お姉、ちゃん」
「――えっ? よく、聞こえなかったな」
「歌織……お姉ちゃん」
いや、実に顔から火が出そうなほど恥ずかしい。とはいえ彼女の望みは叶えたのだ。
これで一件落着はいお開きよ、お互い仕事に戻りましょう――なーんて思った俺だったが。
340Res/273.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20