39: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/09/28(木) 22:41:50.66 ID:uAXr0QO10
なので今、彼女の周りには本人の意思とは無関係に人だかりができていた。
まさに招き猫ならぬ招きギャル、一家に一人欲しいほどだ。
「あっ、めぐみーがまーた捕まってる」
「あの子、まさかと思うけど前世が広告塔ちゃうの?」
海美と奈緒がそんな友人の姿を肴にして、バラエティ豊かな唐揚げや練り物に舌鼓。
「海美見てみ? あんなところに私らが行ってこれ以上の美少女成分混ぜてしもうたら……」
「どうなるの? 女子力上がる?」
「お馬鹿」
「あぅ」
「パニックなるよ。収拾なんかつかへんて!」
大きな円を描くように、両手を広げて見せる奈緒。
渡り蟹の唐揚げを頬張りつつ、大きく目を開き驚く海美。
「じゃあダメだ! 近づけないよね、おっかなくて!」
「一秒持たんとわややでホンマ」
しかも店側にとって幸運だったのは、恵美が頼まれごとを断るのが苦手な性格だったことである。
わざわざ愛想よく声をかけられたことに――
例えそれが、見ず知らずの他人だったとしても――「悪いなぁ」なんて思ってしまう少女なのだ。
普段利用しているファッション街のどこかドライな接客と違い、ここの言葉には"熱"がある。
だから彼女は「いやホント、べっぴんだなんて照れるけど〜」と店に寄り、
「おまけなんて聞いたら気になるしさ〜」なんて気さくに始まる世間話。
そうして最後には「うん分かった! おじさん、美味しいヤツちょーだい?」
「いいとも! これなんか身もぷりっぷりでね――」
「牡蠣かぁ〜……。えっ? このまま一口? ここでぇ!?」
と、いった具合に買い物が捗り過ぎてしまうのだ。
すぐに食べられるよう開かれた生牡蠣を手の平に乗せ、
恵美がつまようじ片手にそれを口元へと持って行く。
もちろん、レモンは絞り済み。
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