267: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/04/22(日) 08:46:30.07 ID:YcDGP+Tn0
そんな千鶴が一人暮らしを始めたのは彼女が大学に通い始めてから。
アイドルにスカウトされたのも大学における学園祭、そこで開かれたミスコンで優勝したのがきっかけだった。
今では学業と仕事の二足わらじ。家に帰れば服装もラフに、作り置きしていたおかずをチンすると、
テレビを観ながらもそもそ遅い夕食を食べるような暮らしを送っている。
「あまり面白い番組も無いですわね……」
とはいえ、ザッピングしながらこぼす言葉遣いからも分かる通り、
千鶴が自身の"セレブらしさ"を磨き始めたのは大分昔のお話で。
今となっては言葉遣い、立ち振る舞い、容姿に関して言えば本物と並んでも殆ど遜色の無いレベル。
後はそう、有名になりお金さえあれば……。
夢にまで描いていた姿、その理想を叶えられるかもしれないのだ。
その為の格好の手段としてのアイドル。
千鶴には転がり込んで来たチャンスを逃すつもりなどさらさら無い。
……ふとチャンネルを変える手が止まった。
テレビ画面には自分の姿が映っていた。衣装を着て、歌を歌い、輝きに満ちた自分の姿。
その視線はカメラに向けられているようだったが、当の本人である千鶴はハッキリ覚えている。
彼女はこの時スタジオの奥、カメラの後ろに居たプロデューサーへ向けて歌声を送っていたことを。
「……わたくしは幸せ者。優しい人と逢うことができて」
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