265: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/04/22(日) 08:43:57.69 ID:YcDGP+Tn0
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「それじゃあ千鶴さん、また明日」
「ええ、ごきげんよう。……また明日」
別れ際の挨拶、いつものやり取り。
まだデスクワークが残っているプロデューサーを乗せた車はクラクションを鳴らして走りだす。
その、遠ざかっていく姿を見えなくなるまで見送ると、千鶴は自宅へ帰るため歩き出した。
以前、プロデューサーに言われたことがある。
「家の近くで降ろさなくても、このまま直接送って行きましょうか?」と。
けれど千鶴は丁寧にその申し出を断った。
男が自分の身を心配して言ってくれた事は理解していたが、
彼女にはどうしても受け入れられないワケがあったからだ。
理由(ヒミツ)。もしバレれば、二人で築いてきた信頼と信用を手酷く裏切ることになる程の嘘。
街灯の光を浴びながら進む暗い夜道。コツコツと響くヒールの音。
千鶴の目指す先に住み慣れた我が家が見え始める。
それは一般的な造りのマンション。何の変哲も無い賃貸の住居。
けれども、だけれど、少なくとも……その建物は千鶴のようなセレブが住むには相応しくない。
だが確かに、彼女はココに住んでるのだ。"セレブ"二階堂千鶴が暮らしている家。
鍵穴に鍵をさし込んで扉を開け、彼女は「ただいま」と呟き中に入る。
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