264: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/04/22(日) 08:42:33.91 ID:YcDGP+Tn0
赤信号で車が止まる。千鶴はそっと視線だけを男へ向けてその顔色を窺った。
血色が良いとは言えない肌、心なしかこけたようにも見える頬、眼のふちには睡眠不足からできるくま。
だが、その目だけはギラギラとした光を纏って前を見つめ、先に述べた不調の兆しを影の中へと隠してしまう。
「やっぱり、千鶴さんは優しいですね」
「えっ」
不意に彼から声をかけられ、千鶴は驚いたように顔を上げた。
同時に、盗み見でもするように彼の様子を観察していたことに対する恥ずかしさも感じて赤くなる。
「裏方仕事の俺なんかよりも、この忙しさには貴女の方がよっぽど参っちゃってておかしかないのに。それなのに、俺なんかの心配をしてくれて」
「そ、それは当然、心配だってするでしょう! 貴方はわたくしの大切な……プ、プロデューサー、なのですから」
「……ありがとうございます。俺、その言葉だけでまだまだ頑張れるって思えますよ」
そうして男は微笑むと、車を信号に合わせて発進させた。
現場へ到着するまでの間、二人がそれ以上の会話を交わすことは無かった。
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