ミリオンデイズ
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205: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/03/13(火) 21:44:42.90 ID:N0yNt449o

……とはいえ、自らの手で花を咲かせる行為自体はなんと心躍り楽しいことか!

気づけば百合子はニコニコと夢中で灰を振り撒いていた。

風に舞う花びらを眺める朋花もまんざらではない様子であり、
そんな二人のことを老人も穏やかな微笑みをもって眺めている。

そのうちに桜も満開となり辺りもすっかり暗くなった。

月の光を浴びて立つ老桜は実に魔性の輝きを放っており、
百合子もまだまだ灰の残りを撒こうとして――

そんな彼女の手をピシャリ! くるりと振り返った朋花が扇子を使って止めさせた。

「百合子さん、余り心を奪われないように」

そう言う彼女の視線は先ほどから桜を見上げる用務員――先週、この木の下で息を引き取った老人の背中に向いている。

彼の死因は急な心臓発作とされていたが、まるで桜の幹に抱き着くように倒れていたと言うその死にざまは、
生徒たちの間に「やはり桜に喰われたのだ」という噂話を流行らせた。

そんな彼が今日の放課後、灰の入ったバケツを手に図書室の扉を叩いたのだ。

心残りである桜の花を咲かせてほしい……と朋花に"相談"するために。


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