184: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/02/12(月) 16:36:14.68 ID:6j8GrbgEo
「ホントか?」
「ああ」
「プロデューサーは俺のこと、嫌いじゃない?」
「だからそうだって言ってるだろ」
「なら、それってつまり好きってことか?」
「……えっ?」
「嫌いじゃないなら、好きってことだろ? 好きじゃないなら、嫌いってことだし」
「まあ……そういうことならそうなるかな」
なんだそのゼロか百かの極端な例は。
……けれどもだ。俺が答えた途端に
嬉しそうな笑顔を浮かべた昴の気持ちに水を差すのは気が引ける。
……ならば俺が取るべき道は。
ここは一つ、彼女の望む回答をだ。
「俺は昴のことが大好きさ。その証拠にいつだって大事にしてるだろ?
キャッチボールにも付き合うし、怒られる時は一緒だし」
「だ、だよな? そうだよなっ!!」
すると昴ははしゃぎながら、羽織っているジャケットの両ポッケから小さな何かを取り出した。
「へへっ。……だったら、そんなプロデューサーにプレゼントだ!」
それは昴の手の平にも収まるサイズの球体で。
周囲を包んでる銀紙に描かれたプリントによって野球のボールにも見える。
……と、言うかボールだ。いわゆるベースボールチョコレートの一種。
それが四つ五つと昴の両手に握られている。
「これ、チョコレートの中に野球関係のミニチュアストラップも入っててさ。
ついつい買いすぎちゃったんだけど、流石に全部は食べれないし」
「ああなるほど。その処理を俺に手伝ってほしいと」
事情を理解した俺が素直にそう言って頷くと、
昴はチョコレートを手渡しながら照れ臭そうにこう続けた。
「それに、こういうのは好きな人に渡したいからさ――」
「なにっ!? す、昴! それってつまり……!」
「あっ……ち、違う違う! 俺が好きな人じゃなくて、俺のことを好きな人に渡したいってことだよ!」
二人同時に驚いて、慌てた様に昴が言う。
「だって……。嫌いなヤツから貰っても、嬉しくなんてないだろうし」
「それでさっきの質問か。……なにを心配してたかしらないが、俺は昴ことを嫌ったりなんてしてないさ」
「……うん」
だから俺は、彼女に満面の笑顔を見せてやった。
言葉は心からの本音であり、信じてくれるといいんだが。
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