172: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/01/27(土) 10:16:04.66 ID:Dt1Jf1hJo
「畜生、今日はしけてやがるぜ」
実入りが無い夜というのは辛い。
エドガーの"趣味"はこうして夜の街を巡り、
道端に倒れた酔っ払いを探して歩くことだった。
運が良ければ道端で眠っている寝坊助たちを叩き起こし、
ついでに幾らかの"介抱料"を請求できる。
どうしてそんなことをしているかと言えば、単純に少年が孤児であったからだ。
物心ついた時から父はおらず、エドガーは貧民街のあばら家の中、母の手一つで育てられた。
けれどもその母親が流行り病で亡くなると、少年が日々の糧を得るのは極端に難しくなった。
昼間の靴磨きだけでは食べて行けない。
だからと言って他の孤児のように人から盗みを働くのは気が進まない。
「常に正しい人でありなさい」それは母との大切な約束であり、エドガーの生きる指針でもあった。
「おいオッサン。こんなトコで寝てると風邪引くぞ」
月明りしかない暗がりの中、ようやく見つけた"お客さん"の姿にエドガーは内心「やった」とほくそ笑んだ。
建物に寄りかかるようにして座っているそれなりに身なりの良い中年男性の傍までやって来ると、
エドガーは相手に意識があるかどうかを確認しようとして――その"異変"を感じ取ってしまった。
……男は息をしていない。それだけならよくあることでもある。
遭う度に嫌な汗を掻いてしまうが、貧民街では昼夜を問わず死体と出くわすこと自体はままあるのだ。
その原因も病気や空腹、凍死に事故。
ゴロツキや追い剥ぎに刺されたことによる出血死とバリエーションに富んでいた。
しかし、しかしだ。
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