ミリオンデイズ
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173: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/01/27(土) 10:19:32.34 ID:Dt1Jf1hJo

「……嘘だろ、おい」

思わず唾を飲み込んだが、喉を過ぎるソレはカラカラの砂のようであった。
口の中が急速に渇いて行き、エドガーの視線は男のある一点に釘付けとなって離れない。

死体である。それは分かる。だがこの死体の首筋にくっきりハッキリと付けられた痕はなんだ?

血の気の無い青い首筋には、等間隔で並ぶ二つの穴が開いていた……
何か鋭い物を突き刺したような、例えるなら獣の牙のような。

――ヴァンパイア。噂話に聞いていた、人に紛れて人を襲う、闇夜の怪物の名前が脳裏をよぎる。

今度は嘘っぱちさと笑い飛ばすこともできなかった。

背中を襲う寒気と共に、背後から不意打ち気味に聞こえた物音によってエドガーは弾かれたように走り出した。

その手足は他人の物のようであり、耳元で大きく聞こえる自分の鼓動の音に急かされるまま
なるべく開けた街路や明るい場所を求めて少年はひたすらに夜を逃げる。

だが、今いる路地は細く長い。目の前に見える出口が酷く遠い。

……あと少しだ。十メートル、数メートル。

「きゃあっ!?」

突然体が弾け飛んだ。冷たい地面で尻をうって、思わず悲鳴を上げるエドガー。

何かにぶつかったのだと顔を上げた、
その視線の先にいたのは貧民街(この場所)には場違いな身なりの少女だった。

地面に横たわる少女とエドガーの視線と視線が合致する。

歳は自分と同じぐらいか――なんてことを頭の隅で考えた瞬間、
エドガーは勢いよくその場から立ち上がると少女の手を引いて走り出した。

「あっ、あの! 一体何をするの!?」

「黙って走れ! 後ろがとにかくヤベーんだよ!!」

背後を振り返っているような余裕などない。
状況の説明をするような時間ならなおさらだ。

エドガーはただただ"危険だ"と本能が訴えかけているこの現場に、
少女を一人残して行くなどできるワケがなかっただけである。


……路地から溢れ出た闇がじわじわと街を覆い出すような月夜の最中。

一組の少年少女はこうして出会いを果たしたのだ。


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