167: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/01/27(土) 10:00:37.97 ID:Dt1Jf1hJo
確かに、村を襲ったヴァンパイアは人の生活を脅かす紛れも無い怪物ではあった。
しかし彼、または彼女らは人語を解し話もする。
姿も人間と変わりなく、真偽のほどは知れないが、
その昔人の男と恋に落ちた一人のヴァンパイアは子供を産んだなんてウワサ話もあるほどだ。
「でもそうね。ヴァンパイアは一匹だけだったのでしょう?」
インク壺に羽ペンの先を浸しながら、リオは確認するようにそう尋ねた。
「まさか血を吸われた村人が第二第三のヴァンパイアに――」
「……なったという話は聞いていない。ヤツを仕留める際にも
少しばかり森の中を泳がせたが、助けに入る者もいなかったな」
「そう」
「それに、しばらくの間は旅の薬術師が村の面倒を見てくれると。
魔除けのスペシャリストだそうだ。私も今回は世話になった」
言って、チヅルはシノーミヤへの報酬の件を思い出した。
差し出がましいとは思いながらも、それとなくリオに打診してみる。
「本人は連れて来れなかったが、希少な薬や香を惜しみなく使ってくれた。
……受け取るかどうかは分からないが、私は礼をしたいと思う」
「あら? あらあらまぁまぁまぁ♪」
わざわざペンを動かす手を止めてから大げさに微笑んで見せるリオ。
机の上で頬杖をつき、楽し気な視線をチヅルへと向ける。
「ふふっ、優しい騎士さまのお願いだもの。私も冷たくできないわね」
「……では?」
「もちろん使いの者を行かせるわ。どのみちあの村の被害の程度を
視察する必要はあったのだし……まっ、物のついでよ」
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