166: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/01/27(土) 09:58:18.61 ID:Dt1Jf1hJo
―>>154からの続き―
ひとえに辺境の街と言えば聞こえが悪い気もするが、
南の国境を守る要であるその場所は国でも有数の賑わいを見せる大都市だ。
もっと正確に街の様子を語るなら、巨大な城とも呼べる砦を中心に造られた城下町。
強固な石壁と堀によって外の世界とは隔てられ、
壁の中に住む住民には遥か北方で行われている戦いの噂もどこ吹く風。
そんな辺境都市の一角にはこの土地を治める領主の住んでいる屋敷がある。
ヴァンパイア討伐を終えたチヅルとロコの二人は今、
屋敷の一室にて一人の人物と対面していた。
高級な肘掛け椅子に腰を下ろし、目の前の机に山積みされた手紙や書類に目を通す
その人物こそこの土地を治める辺境伯。リオ・エレオノーラ・モモセだった。
彼女は新たに広げた羊皮紙にペンを走らせつつチヅルたちへ質問を投げかける。
「それで……害獣退治の首尾はどう? 無事に戻って来れたということは、解決はしてきたんでしょうけれど」
害獣退治。その言葉に、チヅルの口端が僅かに歪む。
「村に被害をもたらしていたのは、初めの報告にあった狼や野犬などではなく……それを使役するヴァンパイア」
「ヴァンパイア? あらまぁ、大物じゃない」
「村人の話では北方の戦が始まったしばらく後に現れたと。恐らくは、戦火に追われる形で南まで――」
「逃げて来た先の村の近くに住み着いた。……イヤね、まるで難民だわ」
怪物の癖にとリオが締める。
隣でロコが頷く様子を目の端に捉え、チヅルは何とも言えぬ気持ちで俯いた。
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