151: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/01/21(日) 18:53:53.87 ID:kNu55X8Eo
「痛むか? 教会で清められし聖なる剣の味はどうだ?」
返事など最初(ハナ)から期待はしていない。許してやるつもりも毛頭ない。
相手の苦しみのたうつ様が憎悪の炎に薪をくべる。
「私に言わせれば貴様など、死肉に群がる屍鬼にも劣る。……少なくとも、奴らは戦場にしか姿を見せぬ分礼儀が良い」
「あ、んな……ハイエナ共と、一緒にすな……! あぁっ!?」
剣を乱暴に引き抜かれた、その苦痛で化け物は声を上げた。
傷口からは大量の血が噴き出る代わりにしゅうしゅうと腐臭をまとった煙が立ちのぼる。
「耳が悪いか頭が悪いか。悪戯に人里を襲う分、貴様の方が下だと言ったんだ!!」
そして森は、再び悲鳴で包まれた。
幾度となく振り下ろされた剣先が相手の耳を、頬を、肩を、腹を、腕を、刻み、傷つけ、
容赦なく与える痛みはチヅルに託された人の遺志だ。
「ワケが違うだろう!? 村人が振るうなまくらとこの剣ではっ!
――これは貴様がっ! 奪った! 人の恨みだ! 私の! 殺されたっ! 部下の恨みもだっ!!」
実に一方的で凄惨な光景。どちらが悪魔憑きなのかを忘れてしまう逆転の関係。
だがこれは私刑ではなく制裁であり、痛みの先には許しがある。
幾重にも付けられた刀傷によって心も折れ、もはや悲鳴すら上げられなくなった怪物の成れの果てを見下ろしチヅルが問う。
「それで? この土地を離れて何処へ行く? 貴様のような半端者は、行った先でもまた村を襲うことしかできまい」
怪物の、虚ろな視線が宙をさまよう。
自らの吐き出した血で濡れた唇がかすれた声を外へ押し出す。
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