128: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/12/07(木) 19:22:42.04 ID:oBiTvi6A0
「ダメだ! 風邪でも引いたら一大事……。環の元気は知ってるが、アイドルの健康管理もプロデューサーの仕事なのだ!」
「……おやぶんの大事なお仕事なの?」
「ああ、そうだぞ」
「ん……じゃあたまきも言うことちゃんと聞くぞ! お仕事は、キチンとやるのが偉いもんね♪」
「よーし! 環はホントに良い子だな」
そうして、再び頭を撫でられながら環はあることに気がついた。プロデューサーのその手である。
冬の寒さに凍えた手は、今まさに血の気を失って青白くなっていたのだった。
当然、心優しき環はプロデューサーの手を掴むと。
「冷たっ!?」
言って、彼の右手を両手で丹念に揉み始めた。驚いたのはプロデューサー。
彼は慌ててその手を振りほどく――という少女の厚意を無下にするような行動に出ることは無かったが。
「環、待て、何やってる!?」
「何って、おやぶんの手を温めてるの。ばあちゃんもね、こうしてあげると喜ぶんだ♪」
「そりゃ、孫にマッサージしてもらうのは嬉しいことだと思うけどな……」
しかし、男は環の祖父でも無ければ父でもない。
彼はゆっくりと環の両手を自らの右手から引き剥がすと。
「そう言うのは家族を相手にするもんだ。後、こんな場所で環に手を揉んでもらってると――」
「えっ? ダメなの?」
「最悪あらぬ疑いをかけられる。……でもありがとな。俺の手の心配をしてくれて」
プロデューサーはポケットから財布を取り出して、貸しビルの前に設置された自動販売機を指さした。
「だからこれ以上冷やさないように、温かい飲み物でも買うか」
言われた環が小首を傾げ、「なんで?」と彼に質問する。
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