129: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/12/07(木) 19:23:52.58 ID:oBiTvi6A0
「なんでって……温かい飲み物を持ってれば、かじかんだ手だってぬくもるだろ?」
「あ、そっか。そうだね!」
「それにレッスンをちゃんと頑張って、さらに俺の心配をしてくれた環にだって買ってやるぞ。ほら、好きなの選ぶといい」
プロデューサーがお札を入れ、自販機のランプが点灯する。
環は彼にお礼を言うとジュースのボタンに指をやった。ガシャコン! と音を響かせて、自販機のランプが再度灯る。
「次、おやぶんの番だよ」
「よーし……どーれーにーしーよーうーかーなー?」
「ねえおやぶん、ボタンはたまきに押させてね!」
環の言葉にうなずくと、プロデューサーはとあるコーヒーを指さした。環が背伸びをしてボタンを押す。
再びガシャコンと音が鳴り、取り出し口から商品を受け取った環が彼に言う。
「はいおやぶん。卵のコーヒー」
「ん、ありがと」
そうして、並んだ二人が劇場への帰り道を歩き出す。
灰色に染まる空を見上げ、環がプロデューサーに訊く。
「おやぶん、明日って雪降るかな?」
「どうだろうなぁ。天気はあんまりよくないし、冷えて来てるからひょっとすると……ってトコじゃあないかねぇ」
「そっか。……たまきね、雪が積もったら劇場のみんなと雪だるま作る!」
「お、いいねぇ」
「それにね、かまくらでしょ? 雪合戦でしょ? かき氷に、ソリもするぞ!」
そこまで言うと、環はプロデューサーに向かって自分の片手を差し出して。
「でね? その時にはおやぶんにも手伝ってもらうんだ! ……だけどその前に、
今日が寒すぎるとしもやけになっちゃうかもだから――」
コーヒーを持たぬ方の彼の手を取り、無邪気な笑顔でこう続けた。
「たまきの手も、おやぶんの手も、こうしておけばしもやけだってへっちゃらだぞ! くふふっ♪」
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