35:名無しNIPPER[saga]
2017/09/21(木) 00:28:58.14 ID:x1eCXNrg0
鞠莉さんの涙は止まることなく、ぽたりぽたりと胸元に溜まっていきます。
ルビィには、それが宝石のように見えました。
鞠莉さんは宝石箱を持っている?
鞠莉さんはなんでも選んで、なんでも手に入れる?
それはルビィの、愚かな思い違いでした。
目の前の鞠莉さんは、ただの鞠莉さんでした。
必死に、絞り出すように宝石を生む、それはそれは綺麗な、ただの女の子でした。
鞠莉さんがルビィを選ばなかったのではありませんでした。
ルビィはお姉ちゃんに映り込む鞠莉さんを、本物の鞠莉さんだと思い込もうとしていただけでした。
ショーケースにちんまりと座ったまま、外に出てみようとも思わなかっただけでした。
鞠莉さんが声をあげて流す涙は、あんまりにも儚くて、溶けてしまいそうで。
ルビィは近づかずにはいられませんでした。
「大きなホテルの金髪の子」が放つ輝きなんかじゃありません。
鞠莉さんが流す不格好な輝きに、どうしても触れてみたいと思ったのです。
ううん、触れなければならないとまで、思ったのです。
気がつくと、ルビィと鞠莉さんは手を取り合って、ぽろぽろ、ぽろぽろ、宝石を生みつづけていました。
それらは沈みかけた太陽をきらきらと反射したまま、次々に服へと染み込んでいってしまうのです。
それでも、今日2人がつくった宝石には、きっと一生分の値がつくでしょう。
肌寒い空気と、チュロスの匂いと、錆びついた音楽と。
そして両手の、あたたかさと。
少なくともルビィは、この日のことを大事に大事に覚えておこうと、そう思いました。
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