28: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:59:31.09 ID:n8F8dLyB0
遡ること数時間。
朝から抱いていた違和感について芳乃について相談しようとしたプロデューサーが、幸子の叫び声を聞いて休憩室に向かった時のこと。
休憩室では異常事態が起きていた。
29: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:00:08.46 ID:n8F8dLyB0
「ウサミン?」
なんだろうそれは。
「ウサミン?」「ウサ、ミン?」「ウサミーン?」
30: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:00:46.69 ID:n8F8dLyB0
「ウサミン」
とても子供っぽい響きだ。
でもきっと中身は大人なんだと思う。
31: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:01:55.18 ID:n8F8dLyB0
なんてことだ。
あんな強烈なアイドルを忘れていたなんて。
俺が思い出したのと同様に、他の皆も思い出したらしい。
32: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:02:41.62 ID:n8F8dLyB0
そして今、無事に菜々を見つけたプロデューサーは語る。
「それから皆で手分けして探してたんだ。芳乃に場所を聞いたら移動中みたいだったから、とりあえず菜々が行きそうな場所を手当たりしだいにな」
「そんな……」
33: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:03:33.06 ID:n8F8dLyB0
「それで、どうだ?」
プロデューサーが真面目な顔になる。
「どうだ、って?」
34: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:04:30.60 ID:n8F8dLyB0
「でも、皆がナナのことを思い出してくれて本当に嬉しいです」
大切な人達が自分のことを覚えていてくれる。
それだけで、そんな奇跡だけで、菜々はこれまでの時間が報われる思いだった。
35: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:06:01.31 ID:n8F8dLyB0
程なくして、店の外から声が聞こえてくる。
しかし入ってきた人達を見て、菜々は「えっ?」と声が漏れた。
「菜々チャン!やっと見つけたにゃ!」
36: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:06:51.06 ID:n8F8dLyB0
「俺達だけじゃ探せるか不安だったからな。ファンの皆にも探してもらうことにしたんだ。こうして『ウサミン』のことを伝えればファンも菜々のこと思い出すんじゃないかと思ったんだが、上手くいったみたいだな」
悪戯が成功した子供みたいに笑うプロデューサーに、菜々は驚くことしかできない。
「あ、ありえないですよ……!」
37: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 23:08:04.42 ID:n8F8dLyB0
でも彼らは違う。
ファンの皆が安部菜々とした会話なんて握手会の数秒程度で、あちらは菜々のことを知っていても菜々は彼らの名前すら知らないのだ。
親密な関係とは、とても言えない。
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