南条光「カンシャノアカシ」
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14: ◆97Mk9WqE8w[sage saga]
2017/09/13(水) 21:56:42.16 ID:dbtwVbjq0

 しばしの思案の後、光が口を開く。

「じゃあさ、まずは弟さんを探そう」

 またコータの目が丸くなる。

「それで、お父さんとお母さんの説得はそれからだ」

「ど、どうして……?」

 目を丸くしたままのコータの真っすぐ見て、光が答える。

「だって、コータくんは嫌なんだよね。お父さんやお母さんの言う通りにするのが」

「……うん」

「お父さん、お母さんには何か理由があるのかもしれないけど、コータくんが嫌なら何とかしたいなぁって。
 ……あんまりいい方法は思いつかないんだけど」

 そう言いつつ、光はうつむいた。
 コータもそれにつられて、うつむく。ただ、なんだか、先ほどまでよりは心細くないと感じた。

「うん。ありがとう……」

 コータの口から自然に漏れた言葉であった。

 光は気を取り直す。

 仕事のことが気にならないと言ったらウソになる。
 だから、最悪の場合はコータを警察に任せてしまうことになるかもしれない。
 でも、そうはしたくない。

 光の中の譲れない何かがうずいている。

「ねぇ、弟くんの名前はなんて言うの?」

「タイチ」

「タイチくんか。――じゃあ、次のバス停で降りようか。
 タイチくんもきっと心細いだろうから、急いで戻ろう」




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