36:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 18:07:09.42 ID:4sMggCAno
◇ ◇ ◇
ドアをこんこんと叩く音がした。
幸子は「はい」と答えて、けれど扉を開けようとはしなかった。
母の声が聞こえた。
「幸子、これからママ買い物に行くけど一緒に行く?」
「ん……ボクはいいです」
「そう? じゃあ行ってくるけど……」
母はそこで何か逡巡するように一呼吸置き、やがて足音と共に去って行った。
幸子はベッドの上で寝返りを打ち、カーテンの締め切った部屋で一人、溜め息をついた。
あの突然の帰還から、もう二日になる。
幸子は未だにあの村で過ごした日々を忘れられず、家に帰ってからというもの拗ねたように自分の部屋に閉じこもり、そして後悔にも似た気持ちをいつまでもくすぶらせていた。
あの村にはたった数日間滞在していただけである。
それなのに何故、こんなに後ろ髪を引かれるような思いがするのか、幸子にはその未練の正体がさっぱり分からずにいた。
幸子はしばらく横になり枕に顔を埋めてじっとしていたが、あんまり一人で悶々としていても面白くない。
ならばと起き上がり、机に向かってみるけれども夏休みの宿題をする気分でもない。
それから幸子はなんとなくテレビを見たり雑誌を読んだりして暇を潰したが、結局それらもすぐに飽きて再びベッドの上にばたりと倒れこむのだった。
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