14:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 17:40:50.05 ID:4sMggCAno
途中で駄菓子屋に寄ってアイスを買ってもらった。
祖母が店主のおばさんと話し込んでいるあいだ、幸子は軒下のベンチに座りアイスキャンディーをぺろぺろ舐めて涼んだ。
店の戸口に風鈴がぶら下がってちりんちりんと可愛らしく鳴っている。
幸子は、ただ日陰に座ってアイスを食べているだけなのに自分がとても贅沢なことをしている気がして楽しくなった。
ふと足元を見るとベンチのすみっこにアリが行列を作っていた。
幸子は試しに行列の横にアイスの溶けた水滴をぽたりと垂らしてみたがアリたちは見向きもしない。
そうやってアリの行列を観察しているうちに祖母が店から出てきた。
幸子が気付いて顔を上げると、日陰に慣れた目に真っ白な光の世界が飛び込んできて思わずくしゃみをした。
祖母はおかしそうに笑って幸子のズレた麦わら帽子を直してやった。……
駄菓子屋から少し歩いた先に「おみやさん」はあった。
こじんまりした社がひとつ建っているだけである。
うっそうとした木立にかこまれていて昼下がりにも関わらず全体が薄暗い。
鳥居をくぐって境内に入ると驚くほど空気が冷たかった。
しっとり濡れた地面にはあちこちにコケが生えている。
時々、視界の隅にわずかな木漏れ日が差して黒い樹木の根元をちらちらと照らしたりする、それがなければきっとこの場所は永遠に時が止まったままだろうとさえ思われるほどに。
そんな風に幸子が一人感嘆の声をあげて境内を見渡していると、建物の裏に人影が見えて「あっ」と叫んだ。
先客がいたのである。
「アナタは朝の!」
「…………寝癖の人……」
例の少女が物陰に隠れてじっとこちらを見つめていた。
幸子は最初、その姿があんまり暗がりの中に馴染んでいたのでぎょっとしたが、すぐに気を取り直して「こほん」とひとつ咳払いをした。
「だから寝癖じゃありませんってば」
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