62: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:00:54.97 ID:329xTyVto
森久保乃々
『紅か蒼か――』
63: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:01:22.23 ID:329xTyVto
どうしてこうなったのか、私にもわかりません。机の下でウトウトとしていたまでは覚えているんですけど……気が付けばこんな密室で目の前には如何にも爆弾です言わんばかりのビジュアルの物体……。自分でもびっくりするくらいの速さで扉まで駆け出しましたが、やはりというべきか重くて開きそうにありません。
「どうして……私がこんな目にぃ……」
爆弾処理なんてむーりぃー……と言いたいところですが、ご丁寧にペンチまで用意してくれていて、紅いコードと蒼いコードが並んでいます。何も言われなくても察しました。どちらかのコードを切れば爆弾は止まるけど、もし間違えたら……BOMB。
64: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:02:32.68 ID:329xTyVto
「そ、そうです……こういう時はどこかにヒントが」
前に凛さんがスマホでプレイしていた脱出ゲームを思い出しました。あの手のゲームはプレイする以上必ず脱出の鍵となるヒントがあります。そうじゃなければ遊びとして成り立ちません。現実に起きている非日常と一緒くたにするのもナンセンスくぼな気がしますが……私は震える足で部屋の中を隅から隅まで探しました。カチカチと規則正しく刻まれる時計の音に急かされるように。机の下、カバンの中、新聞の隅、こんなところにあるはずもないんですけど……。
「くそげー……です」
65: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:03:31.31 ID:329xTyVto
「け、圏外ぃ……」
無常にも画面には圏外の二文字が出ていました。これは諦めて死を選べということでしょうか……。それがもりくぼの運命ならば受け入れるしか……。
66: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:04:14.37 ID:329xTyVto
「ど・ち・ら・に・し・ま・し・ょ・う・か・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り」
私の指は紅いコードを指していました。神様が言うんだからこれは正しいはずです。だから私は紅いコードを……。
『運命の紅い糸を、切るんですかぁ?』
67: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:05:55.35 ID:329xTyVto
そんなこんなで、爆弾のタイマーは残り3分を切ったんです。ラーメンを作っても間に合いません。コードを切ろうとするとその度に頭の中で不安やら良からぬ考えがよぎって、なかなか行動に移せずにいました。いっそ机の下というシェルターに隠れるべきかと思いましたが当然守ってもらえるわけがなくて。覚悟を決めなきゃと思ってはいるんですが……。
『紅いコードを切ったらダメですよ、乃々ちゃん』
『蒼いコードが正しいよ、乃々』
68: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:06:32.24 ID:329xTyVto
「大丈夫……今日のもりくぼはやれる気がします」
ペンチを持つ手の震えは止まりませんが、それでも少しはマシになったと思います。気が付けば脳内の2人も黙って私を見てくれています。そうです、また服を買ったり映画を見たり……お仕事をしたいから。
「ここで死ぬなんて、むーりぃー!」
69: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:07:19.46 ID:329xTyVto
「無事に帰れそうです……生き残りくぼです……」
ガチャリ、と鍵が回る音がするとあれだけウンともスンとも言わなかった扉が自動的に開いていきました。私は軽やかな足取りで扉の向こうに待っている、外へと足を踏みだし……。
「あれ?」
70: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:07:57.26 ID:329xTyVto
森久保乃々
『紅か蒼か黄か』
71: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/08/30(水) 21:08:53.28 ID:329xTyVto
以上です。失礼いたしました
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