277: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/09/30(土) 10:31:12.47 ID:ktVirj9S0
へえ、意外と綺麗にしてるんだね、というのが第一印象だった。
しかし、よく見てみるとそれは、片付いているというよりは物がない。物がなさ過ぎて散らかしようがない、という部屋だった。
そこそこ広めのワンルーム、だけどせっかくの面積を無駄にするように、机がひとつと小さなタンスひとつ、あとはベッド、それしかなかった。備え付けのクローゼットが開いていて、ワイシャツやスーツが掛けられているのが見えた。机の上にはノートパソコンが乗っている。つまり最低限の衣類とパソコンしかない。
いかにも、寝に帰るだけの部屋という感じだ。日頃から「仕事が恋人」と言っている彼らしいかもしれない。
恋人といえば。
うん、どう見ても女の気配はないね。
この部屋に通い詰めるのは、いくらなんでも不便すぎるだろう、付き合っていれば多少なりとも私物を置くはずだ。それに……
加蓮は部屋の壁を眺めた。正確には、壁にある加蓮のポスターを眺めた。それも壁紙に直接貼っているのではなく、簡素なものではあるが額縁に入れて飾られていた。
なーんか嬉しいな、こういうの。……まあ、隣には奈緒のポスターがあって、更に隣には美嘉のポスターが飾られてるんだけども。
職業がアイドルのプロデューサーだと知っていても、仏のように慈悲深い女でない限り、この部屋は嫌がるはずだ。そんな女はいない。
玄関の方からカチャカチャと音がする。上がってきたプロデューサーが鍵を開けているのだろう。
もうちょっとゆっくりしていきたいところだけど、そろそろ時間がヤバイかな。
加蓮は玄関に向かい、ちょうどドアを開いたプロデューサーの胴体を突き抜けていった。
――また今度ね。
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