273: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/09/30(土) 10:27:17.70 ID:ktVirj9S0
翌日になっても疲労は抜けきらず、加蓮はレッスンで多くのミスをやらかし、トレーナーから散々に怒られた。
「調子、悪いのか?」
レッスン終了後、加蓮と共にレッスンを受けていた奈緒が問いかけた。
「風邪とかじゃないよ、半身浴ってのやってみたら、思ったより疲れちゃって」
「ああ、こないだ川島さんが言ってたアレか。けっこう体力消耗するよな」
「奈緒もやってみたんだ? どうだった?」
「どうって……普通だよ。汗かいて疲れた、体重は変わってない。そんなすぐ効果が出るようなもんじゃないだろ?」
「そうだね」
そういえばダイエット効果なんてものがあるんだっけ、すっかり忘れていた。美容のほうも忘れていたぐらいだ。
そして、奈緒は幽体離脱はできなかったようだ。当たり前かな、誰でもできるようなら、もっと大騒ぎになってるだろうし。きっとあれは、アタシだけが特別なんだ。
「体って、重いよね」
「アホか、加蓮はもう少し太れ」
「じゃあ今から食べに行こっか? 最近この近くでみつけたお店、お客さん少なくて居心地いいんだ」
「……いちおう訊いとくけど、何屋?」
「誰でも知ってるハンバーガー屋さん」
「やっぱりか、うーん……駄目だ、あたしはパスで」
「えー、なんで?」
「ダイエットしながらファストフード食ってどうすんだよ。意味ないだろ」
奈緒も全然太ってないのにな。
「だったら、アタシひとりで行こうかなー」
「でも、もうすぐ雨降るぞ」
レッスン室の窓に目を向ける。暖かな陽光が差し込んで、きらきらと輝いていた。
「……いい天気に見えるけど? 天気予報でそうなってた?」
「予報とかは見てないけど、湿気の具合でなんとなくわかるんだよ」
「エスパーみたいだね」
「軽率に召喚ワードを口にするな。来たらどうする」
「これで来たらむしろ本物だよね」
加蓮は笑った。奈緒もつられたように笑った。エスパーは、どこかでくしゃみでもしているかもしれない。
超能力か、今だったらそれも信じられる気がする。奈緒の天気予報だって、見ようによっては一種の予知能力みたいなものだろう。
だけど、アタシのは、もっとずっと面白いよ。
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