102:名無しNIPPER[saga]
2017/09/01(金) 00:38:42.99 ID:gRyzT9wx0
頼子からこんなに大きな声を聞くのはいつぶりだろう。
いや、初めてのことかもしれない。
目に涙を浮かべる頼子は、口を開き、次の言葉を紡ぎ始める。
「……覚えていますか? 始めて私と都ちゃんが話したときのこと」
まるで懐かしむように。
「事務所の廊下で落し物を探す私に、都ちゃんが声を掛けてくれたんです。『どうかしましたか』と」
都はまだ俯いている。
「まだ事務所に入ったばかりの私にとって、あの時の『任せてください』が、どれだけ嬉しくて、どれだけ心強かったことか」
「都ちゃんは、とても一生懸命に、探し物を手伝ってくれました。私の通った廊下や部屋をくまなく、這いつくばるくらいに」
「そして、見つけてくれたんです。……見つけ出してくれたんです」
「その時の喜びは、言葉では言い表せません。探し物が見つかったことはもちろんです。しかし、それ以上に」
「私のために、こんなにも真剣に悩んで、考えて、探してくれる。そんな都ちゃんと出会えたことが、仲間になれたことが、本当に嬉しかった!」
「……っ!」
頼子の一言一言が、突き刺さる。
「思い出してください、都ちゃん。まだ遅くありません」
そうだ。なぜ忘れていたんだ。
「思い出してください、皆の為に、たとえ解決できなくても、懸命に謎に立ち向かう都ちゃんを」
カッコいい探偵に憧れた。
スマートに事件を解決に導く探偵に憧れた。
でもその探偵だって、地道な調査と、細かい推察を重ねて、重ねて、重ねて。
やっとの思いで真相を暴き出す。
だからカッコいいんだ。だから、憧れたんだ。
今の私は
こんな私は
――探偵なんかじゃない!!!
「探偵・安斎都を、思い出してください!!!」
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