「藤原肇がそれを割る日」
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89:名無しNIPPER[saga]
2017/08/18(金) 00:36:17.21 ID:dZyp/T120
「ここ最近、ずっと口数が少なかったのも……一生懸命、我慢していたんだよね」

 夕美さんは、そっと私の手を取りました。

「口を開くと、抱えてる不安とか、不満とか、嫌な言葉をふとした拍子で皆にぶつけちゃいそうで、それが怖くて……だから、我慢していたんでしょう?」


「肇ちゃんは、ずーっと私や、皆のことを想ってたんだね……よく、我慢してきたね」



 私は――目を瞑り、黙って首を振りました。

 違いますと、言おうとしましたが、言葉が出ません。

 夕美さんは、窓の外を見ています。

 私の方を、見ないようにしてくれています。


 静岡を過ぎました――たぶん、そろそろ窯出しが終わった頃でしょう。



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