「藤原肇がそれを割る日」
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5:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 19:18:30.39 ID:pXJ6Ifkk0
 体験教室は、時間の都合もあり、ご希望ではなかったようです。

 曰く、高校の卒業旅行で来たものの、友達とはぐれてしまい、携帯の電池も切れてしまったとのこと。

 ただ、嬉しいことに、備前焼は旅の目的の一つだったそうで、私との偶然の出会いをその人は喜んでくれました。

「すみません、コンセントまで貸してくれるなんて」

 充電器をお持ちで良かったです。


「この中に、あなたの焼いたものもあるんですか?」

 一通り眺めた後、彼女は、ふと私に問いかけました。

「小さいですが、その湯呑みや、その下にあるお皿は、私が仕立てました」
「これ? うわぁ……うん、すごいっ!」

 何がすごいかは分かんないけど、と、正直に付け加えてくれたことに、何だか好感が持てます。

 それに、彼女は義理ではなく、とても素直な気持ちで、私の作品を良いと言ってくれているような気がしました。


「じゃあこれ、くださいっ!」

 ご両親へのプレゼントにと、私の作品である一組の湯呑みを選び、私に再度微笑みかけました。

 まるで、そこに花が咲いたかのような、綺麗で眩しい笑顔です。



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