女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
1- 20
79:名無しNIPPER[saga]
2017/08/25(金) 18:50:23.98 ID:as1CpHWZ0
『ずっと考え続けてるわけだ。これ以上の正解はないって知っているのに。なのに苦しんでるわけだ。意味もなく、救われなかったもののことを考え続ける』

 怒りの混じった声。

「そうだ。僕はそういう生き方をしている。考えれば考えるほど八方ふさがりなのがわかって。それでも考えることはやめられないんだ」

 そういうものだった。彼女と話すことによって変容した僕の思想は、そういうふうになっている。

 不変の意思。くだらない理想論。無意味でもったいぶっていて、本人ですら価値を認めてはやれない。
 それでも、それでもこれは、間違った考えじゃない。

『なんでなんだ?』
「正しいことだと、信じているからだよ」
『苦しいだけなのに? なのに他人のことなんかを考えてるのかよ』

 ふざけるな! と声が叫んだ。

『それで祐樹さんになんの得があるんだ? なんで身を削ってるんだよ! なんで祐樹さんが苦しい思いをしなきゃいけないんだよ! 犠牲になる必要なんてないじゃないか!』

 苦しむようにのたうつ影。

『なんでそんなに優しいんだ? なんでそこまで他人のことを考えるんだ? 義務なんてないのに、なのになんでそこまでするんだよ!』

 ――優しい、ね。それは意味がない。

「でも僕は結局、誰も救えちゃいないんだよ。偽善行為の自己満足だ。結果が出せていないんだよ。だから、誰かが僕を庇う必要はないんだよ」

『それは違うよ』と誰かが言った。

 影の形が再び変わる。女の影。

『少なくともキミは、私を救ってくれた』

 救った? 救われた? そうか、それは正しいのかもしれない。
 でも、

「でもきみは犠牲になるんだよ。死ぬんだ。ひょっとしたら魂が消耗される痛みに、何十年も苦しむことになるかもしれない。きみは救われちゃいない」
『そんなこと……』
「そういうことなんだよ。結果的に僕は何もできていない。結果が全てなんだ。努力? 努力すればきみが苦しんでもいいのかよ!」

 やるせなさがこみ上げる。完璧な人になりたかった。目指すんじゃない、完璧そのものになってきみを救いたかった。犠牲なんてシステムがなくても、都市の人々は生きていけるような、そういう創造をしたかった。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
187Res/253.48 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice