女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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名無しNIPPER
2017/09/08(金) 20:23:41.86 ID:c9qxGCK40
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僕はゆっくりと周囲を見渡す。彼女を救うために、裏の支配者とやらがいれるのなら、地下にある都市からそれほど遠くないところに居を構えているはずだろう。少なくとも、ばかげた遠方からはるばるくる……なんてことはないと思いたい。僕らの都市に、飛行機を作る技術というのはあるにはある。だがそれでも、利便性を考えれば車で来れるぐらいの距離であるのが妥当だろう。
ついに来た地表には、砂嵐が吹いていた。生き物の気配なんて感じられない、だだっ広い砂漠。
「きつい天気だ。といってもほとんど年中こんな有様らしいがな」と隊長は言う。
望遠鏡を用いた地表の探索は何度も繰り返されている。しかし、基本的には砂嵐や霧が立ち込め、周囲が見えない状態だ。そもそも、砂嵐と霧の共存というのがあり得ない。出た結論は地上はおかしい、とのことだった。地表は現実とは思えない、異常が続くミステリアスとも言ってもいい謎だらけの場所だ。
「おい見てみろよ、サラサラした土だぞ」
一番がはしゃぐ。
「それは都市にもあるだろうが……」と二番。
「はめをはずしていいとは言ったが早すぎるだろう……」と隊長。
たがみんな、抑えているだけで似たような状態だった。押し寄せるのは未知への期待感と、興奮だ。現に僕も、そういったものを感じていた。ここは、明らかにおかしいが、だからこそ何かを期待してしまう。
肉声は防護服と砂嵐の影響でほぼ聞こえない。用いているのは特殊なトランシーバーだ。だがこれも近距離でないと魔素の影響で届かないので、はぐれたら使えなくなる。
「知っての通り、今回の我々は仕事は地表の探索だ。期限は三日。よってマージンもとって一日かけて真っすぐ移動し、また一日かけて戻る。元の位置に戻れるよう、特別性のワイヤーを出発地点にくくりつけ、それを装備して、帰るときはたどっていく。食料は活動に適した少量のものだ。……まあ、都市を作った『賢者の塔』なるものでも運よくみたいものだ」
賢者の塔。そこに住まう科学者が、星が堕ちたときに都市を作ったとされている伝説だ。もっと昔の資料はある程度存在するにも関わらず、星が堕ちたその瞬間についての資料は、不自然なほど都市には残っていない。星堕ち当時の資料だけが少なすぎて不自然なのだ。そもそも、考えてもみれば、星が堕ち、人が死んでいく中でどうやって都市を作ったのだろう。魔素は急速に人体に影響を与え、拡散スピードも速い。であれば、前もって星が堕ちてきた対策を用意し、そうして都市はつくられているわけで、それをしたのは誰かのか、ということになる。それが賢者の塔の伝説というわけだ。
『先を見越した賢者様は未来のわれらを救いたもうた』
……これは単なる伝説であり、おとぎ話。でも、これを聞くと否が応でも……なにかあるのでは、と考えてしまう。まあ、他の隊員たちはそこまでは思わないだろうが。
「出発」
周囲を見渡しながら僕らは歩み始める。地表には生き物がいると聞いていたが、あるのは砂ばかりで、緑すらみえない。辺りは砂と霧が混じり、空は暗く、濁っていた。
ワイヤーが僕らの歩みを証明するみたいに、跡に伸びている。
「死んだ土地」と誰かが呟く。
まったくその通りだと思った。何かが生きている様子が、まるでない。
「おい!」
歓喜に似た叫び声。
「興奮しちゃだめぞ一番」と二番が冷静に諭す。それをろくに聞かず一番はある方向に指さした。
「生き物だ!」
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