211:名無しNIPPER
2017/09/21(木) 13:38:05.25 ID:yoGsi3kr0
「――――豊後水道沖夜戦事件」
妹から発せられたその言葉に私は反射的に立ち止まる。な、なぜ妹がそのワードを!?
「五月雨ちゃん、その事件の生き残りなんだってね」
続けて妹はそう口にする。私は心臓の高鳴りを抑えながら、静かに彼女の方へと身体を向けた。まさか……ね。
「えっと、北上さん、豊後水道沖夜戦事件って何のことかなぁ?」
五月雨は知らないのか、事件について訊き返す。
「私、聞いたよ。五月雨ちゃんも分かってるだろうけど、今日ね、私、五月雨ちゃんの妹に会ったんだよ」
土佐沖ノ島泊地の涼風のことだ。なるほど、あの時、やはり涼風は姉のことを妹に色々尋ねていたのだろう。
「うん、私もその涼風には遭って、追いかけられたよ。でも、その子、他の五月雨と勘違いしているの。だから私はその五月雨じゃないんですよ」
五月雨は落ち着いた表情で、そう返す。
「じゃあ質問変えるけど、なんで五月雨ちゃんは五日くらい前に吹雪ちゃんの指輪を見つけたときに、指輪を借りたの? あと、吹雪ちゃんのネックレス持って行ったのって五月雨ちゃんでしょ?」
妹の言葉に五月雨の表情が硬くなる。
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