202:名無しNIPPER
2017/09/21(木) 13:29:07.15 ID:yoGsi3kr0
一年十カ月前……吹雪中佐が前任司令官とケッコンする一年前のことである。中佐に何かあったのだろうか。
「ちと辛いことって……?」
「まぁ、端的にいえば、大切な人を亡くしたんですよ」
「……それは艦娘……?」
「それ以上は答えたくはありません」
「す、すまなかった……」
中佐は隣で、煙草をポケットから取り出して加熱式煙草に差し込む。嘆息を吐くと、吸い始めた。
「私の過去なんて少佐は知る必要などないでのですよ。少佐は、貴方の指揮下の艦娘の事だけを背負えばよいのです」
一匹狼な明石中佐らしい発言である。しかし中佐は女性であり、しかも私と同じくらいでまだ若い。だから私には何となく彼女が虚勢を張っているようにもみえた。
「あ、ああ……」
「まぁ、そんな訳で私はアカトゥルフを引き取ることにしたのです。司令官も猫好きだったので、快諾してくれましたよ……」
「前任司令官も猫好きだったのか」
「ええ。引き取ってから、司令官はよくアカトゥルフと遊んでましたよ。かなり懐いてたと思います。泊地の子たちからも好かれ、アカトゥルフも病気もせず元気にここまで成長してくれました。健康でいられるのは眼球型AIコンピュータに健康状態を調べるプログラムやら、さっきの猫が食べてはいけない物をAIが分別してくれるプログラムやらが入ってるからでもありますが」
アカトゥルフは幸せものだな、と私はアカトゥルフを眺める。
アカトゥルフは顎を動かして「にゃあ」と鳴いた。早く二匹目を釣れということか、はいはい。
「……っと、すいません、アカトゥルフの事を長々と話してしまって……」
「いえいえ、こちらこそアカトゥルフの事を知れてよかった。んで、中佐が話したかったことってこの事なのかい?」
「ぜんぜん違いますよ。本当は、少佐とはちょっと話しながら酒を飲みかわす程度にして、本題を伝えて、帰ってもらうつもりでした。ついついアカトゥルフの話で盛り上がってしまいました……」
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