113:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:52:05.54 ID:xy6mxyet0
「あ、ああ」
珍しく明石中佐は熱く隣で語っていた。
アカトゥルフにはそれが子守唄に聞こえているらしく、中佐の足元で丸くなって寝ている。
「人が『死』を真に恐れるのは、死ぬまでの痛みや過程とかではなくて、自分自身の積み上げた全てが崩壊して無に帰すからです。轟沈も同じです。
――果たして、身体という入れ物は一緒でも、自我や記憶を失ったあとに作られる『自分』は轟沈する前の『自分』と一緒でしょうか?」
「私には分からない。が、記憶や思い出を失っては、轟沈前の自分と復活後の自分の連続性はないだろうなぁ」
「ええ、少佐の言う通りです。
そこで人生が途切れているのですから、私には、それは一種の『死』であると思いますよ。
そして、轟沈する子はその絶望に浸りながら沈んでゆく。
まだ若くてやりたい事もいっぱいあると言う時期に……。
これほどの絶望があるでしょうか。
私はそう言う意味で、残された自分自身の辛さよりも、沈んだ子の事を思うと辛いんですよ……」
明石中佐はうつむき加減で嘆息を吐くと、残りの煙草を吸う。
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