179: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/08/31(木) 17:48:55.41 ID:PIXFVoZp0
江風の言うとおり、総発狂状態のムルマンスク市民を除けば既に中核の武装集団は200人近く────通信で聞こえてくる他の先遣部隊の撃破報告も併せれば確実に300人以上俺達で処理している。
こいつらの実際の組織規模は不明とはいえ、中規模程度の組織なら全滅も十分あり得るレベルの大損害だ。
だが、そうなるとまずこの戦力配分が不可解極まりない。ただでさえ質の低い戦力をわざわざ各個撃破されるためだけに市街地にばらまき消耗した挙げ句肝心の鎮守府付近には元より碌な防衛線が引かれておらず、いざ鎮守府内への侵入を許せば今度は防御拠点として優秀な施設建造物を放棄してわざわざ屋外で決戦と来た。
はっきり言って、ウォッカを直接脳に注射されて錯乱しているとしか思えない。特にもし今し方時雨達が殲滅した敵が本当に最後の戦力だったのだとしたら、最早この程度の組織に基地を奪われたロシア軍全体の質が疑わしくなってくる。
勿論、その可能性も捨てるわけには行かない。だが、俺達の中に江風ほど事態を楽観視できる度胸がある奴はいなかった。
( ゚∋゚)σ「………」
(,,゚Д゚)(………クソッ)
それでも、希望的観測が全く芽生えていなかったワケじゃない。本当に今のが最後だとしたら(ロマさんからの一番新しい任務はしくじっていることになるので大目玉確定だが)こっちとしては楽だ。敵は弱い方が楽に決まっている。
だが、Ostrichが指さした先─────立ち並ぶ施設の隙間から見える、港に浮かぶ“艦影”。それを目にした瞬間、うっすらと抱いていた疑念が確信へと変わる。
アドミラル・ゴルシコフ級。ロシア海軍が深海棲艦の攻勢激化に対抗して僅か三週間前に進水させたばかりのフリゲート艦が、“全くの無傷”で水面に浮かんでいた。
「………あのさ、なんで最新鋭艦が深海棲艦からもテロリストの奴等からもなんの攻撃も受けずまだ停泊してるんだろうね」
(,,;゚Д゚)「…………決まってんだろんなもん」
頬を伝う冷や汗。同じような水滴を額に浮かべた2番艦の問いに答えつつ、俺は手元のAK47をゆっくりと胸元まで持ち上げる。
「罠だ」
正面の鎮守府本舎窓から、無数の銃口が此方に向けて突き出された。
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