92: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:47:57.21 ID:U37eLnDj0
「おお……!」
見えてきたのは、江ノ電の線路と、線路脇に咲く紫陽花、そしてこじんまりとした神社だった。
丁度江ノ電が通って行き、紫陽花を揺らす。紫色の鮮やかな紫陽花が、緑色の車体によく映える。
電車と紫陽花、それに神社……普通ならまじりあわない要素かもしれないけれど、この場所では不思議とピッタリだった。
93: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:48:34.01 ID:U37eLnDj0
「……うん、やっぱり、路に迷ってよかったかも」
目を瞑って、涼やかな風を浴びる。
木の葉が揺れて、偶に日差しが当たるけれど、それすらも気持ちいい。
そんな風に、ウィンドサーフィンとは全く違う形で自然を楽しんでいたら……。
94: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:50:41.33 ID:U37eLnDj0
●
「……ん」
一際強い風に吹かれて目を開けてみれば、影の位置が変わっていた。どうやら、けっこう寝ちゃっていたらしい。
95: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:51:14.39 ID:U37eLnDj0
「下見の最後はここ?」
「そう、この神社。ほら、あっちに鳥居と線路、紫陽花があるじゃん?」
「あー。そっか、今回は『鎌倉あじさい巡り』だもんね」
96: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:52:38.11 ID:U37eLnDj0
「おー。あれって江ノ電の線路? へー、電車が来たら、なんかいい雰囲気になりそうだね!」
「だろ? ていうか悪いね、下見なのに美世に運転させちゃって。俺の地元なのに」
「いやいや、私は車の運転好きだし。鎌倉も、一度運転してみたかったからさ」
97: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:53:39.25 ID:U37eLnDj0
「……お兄さん?」
「ん? あれ、海ちゃん!」
きっちりとしたスーツ姿で、赤茶けた髪をきちっと整えた、男の人。
98: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:54:13.44 ID:U37eLnDj0
ちらりと見てみれば、綺麗なお姉さんは、こちらを興味深そうに見ながらゆっくり歩いている。
やっぱり見た事ある気がするんだけど……兎も角、なんだかそれが無性に腹が立つ気がする。
ウチはあんなに気を揉んだのに。
「いやー、侍らせてるわけじゃないよ? これも一応仕事だからさ。撮影の下見」
99: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:54:54.81 ID:U37eLnDj0
近づいてきた女性――アイドルの原田美世さんが、はにかむようにして笑う。
うわ、可愛いなぁ……。思わず、そんなことを思ってしまう。
「へぇ、海ちゃん、美世のこと知ってるんだ。ちょっと意外な気もするけど」
100: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:55:30.45 ID:U37eLnDj0
「海ちゃんには言ってなかったけど、実はこういう者なんだよね」
そこに書かれていたのは、お兄さんの名前。
そして。
101: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:56:34.44 ID:U37eLnDj0
●
「はい、海ちゃん」
「ん、ありがと」
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