2: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:50:35.10 ID:GPsfCuOW0
1.ビーチの出会い
ボードを持ち、セイルを持って、ウチは海に入る。
本当なら、まだ海に入るの早い時期。ウェットスーツとシューズ越しとはいえ、冷たい海水が身に沁みる。
まぁこの感覚も、ウチは好きなんだけど。
3: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:51:20.31 ID:GPsfCuOW0
「よしっ……それじゃあウチも行くとするかな!」
ホントは良くないのだけれど……一瞬片手を放して、ぱんっと頬を叩いて気合を入れた。
そうしてから、もう一度セイルをしっかり掴んで、後ろの足をボードに乗せて引き寄せる。
決してボードを蹴り出さないようにしながら、反り上がるように体を上げて、前の足をそっとボードに乗せた。
4: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:52:03.91 ID:GPsfCuOW0
ボードに乗った瞬間、ぐっとセイルが力を受けるのを感じる。
その力に体を支えてもらえるようにしながら、風を掴んで、推進力に変えていく。
風を掴んで、風を切って、波を切って、大海原を進む。
まだまだ風は冷たい時間帯だけれど、すぐに熱くなっていく体には寧ろ丁度いい。
波と波の間でターンすれば、飛沫が飛び散り、朝日に照らされて宝石みたいにキラキラ輝く。
5: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:52:42.51 ID:GPsfCuOW0
そう叫んだ瞬間、一際大きい波が砕けて、ウチの方へと襲い掛かる。
けれどそれに負けじと風に乗って、海を滑って飛沫の中を走り抜けた。
ああ、気持ちいい……本当に気持ちいい!
こうやって風に乗り、海を滑るたび、思い知らされる。
ウチは――杉坂海は、ウィンドサーフィンがたまらなく大好きなんだって。
6: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:53:14.20 ID:GPsfCuOW0
●
それから一時間ほど風に乗って海を滑り、ウチは浜へと上がっていた。
レイルジャイブもだいぶ出来るようになってきたし、いい感じかな。まあ、倒れたりもしたけれど……ウォータースタートの練習にもなったし。
途中、風がオフショア気味になったので少し心焦ったけど、戻る頃にはまたオンショアになってて一安心だった。
7: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:53:48.33 ID:GPsfCuOW0
「いやー、ウィンドサーフィンしてるところ見てたんだけど、キミ上手いねぇ!」
パチパチパチと拍手しながら、近づいてくる男の人がいた。
何だろう、と思ってそちらにちゃんと視線を向けてみたけれど……。
8: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:54:19.07 ID:GPsfCuOW0
「途中コケても、すんなりウォータースタートしてたし、かなり上手いよね。もう結構長いの?」
「んー……まぁ、一応」
一応、山口にいたころからやってたから、歴はそれなりに長いことにはなる。
けど、いきなりそんなこと聞いてくるなんて何が……っていうか距離近っ!
9: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:55:04.03 ID:GPsfCuOW0
「やっぱそうだよね。いやー、あんま上手いんで驚いたよ」
「あの、そう言ってもらえるのは嬉しいんですけど……何か、」
「あ、ゴメンゴメン。キミが滑ってるところ、ホント綺麗だったからさぁ! 思わず見惚れちゃってさぁ。そんで声かけたんだ」
10: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:55:35.32 ID:GPsfCuOW0
「あの、その……ウチ、これから学校なんで! 失礼します!」
「あ、ちょっと――」
何か言いかけてた気もするけれど、それを気にしている余裕はなかった。
11: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:56:30.33 ID:GPsfCuOW0
●
「……ってことがあってさぁ。もうビックリしちゃったよ」
一限が始まる前、朝ご飯用に作ってあったおにぎりを、中庭のベンチでほおばりながら、今朝あったことを友達に話していた。
12: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/07/14(金) 21:57:39.84 ID:GPsfCuOW0
「へぇー。ていうか、また朝からやりにいってたの?」
「まぁね! 今は少し余裕あるし、出来るうちは行くつもり」
「講義前なのに元気だよねぇ、海」
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