勇者「勇者なんてクソ喰らえ」
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3:名無しNIPPER[saga]
2017/07/03(月) 18:08:31.15 ID:pTAgI72RO
勇者の試験会場は街の外れにあった。迷路のように入り組んだ路地裏を抜けて、西の監視台を登る。最上階まで登ったところで、一人の老人が掲揚旗の下に座っているのが見えた。
夕陽が老人を照らし、彼の影法師が飴みたいに後ろへと伸びている。幻想的だ。

ユ「おい、てかなんで俺しかいないんだ」

もしかして、来ちゃいけないタイプのヤツだったか? とまでは流石に言えない。
ツルッパゲの老人は汚れた糞僧衣を整えて、いきなり俺に向かって拝跪してきた。全く以て意味が分からん。だが、悪い気はしない。
他人に跪かれるなんて経験、今まで一度もなかったからな。意外と良い気分じゃないか。

老人「勇者アブドゥルムウミンの末裔、ユ・ウシャー殿であらせられるか。この老骨、貴殿がここに来ることを待ちわびておりました」

ユ「アブドゥルムーミン? なんだそりゃ。冷やかしなら帰るぞ。時間無駄にしたわボケが!」

老人「お待ちください! 看板を見たのでしょう。勇者を募集していると」

ユ「ああ、見たよ。見たとも。だがすぐに嘘と分かった。教官が言ってたんだ。今年から勇者は実技よりもコミュニケーション能力が重視されるって。そうなんだろ?」

老人「およよ? それは誰が流した戯言ですかな? その教官、少々勘違いをされているのではあるまいか」

ユ「勘違いだって?」

老人「勇者は昔から孤高の存在。巨悪に一人で立ち向かうからこそ、勇ある者と謳われるのです。数人で連携して殴ろうなど、チンピラの考えとまるっきり同じではありませんか」

ユ「なるほど、で、あんたは俺を勇者だと認めてくれるわけかい?」

老人「まだですな。勇者の末裔ではあるが、勇者としてはヒヨッコ。魔王を倒さぬ限り、勇者とは認められません」


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