25: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/25(日) 02:00:33.53 ID:zKrhlsv70
こいつは決して馬鹿ではないし、見てくれだって悪くない。毒舌にすぎるきらいはあるが、それだって辛口評論家に一定の需要があるようなもので、大して問題じゃあなかった。
だから一躍時の人となるまでに、そう時間はかからなかった。
能力者は即座に陣内崎へ移送される。それは悉皆周知の大前提であるが、稀有の時ばかりは完全に陣内崎の内と外、それぞれの思惑が対立していた。即ち、どちらもこんな不祥事の源泉を、自らの懐においておきたくなどなかったのだ。
連日押しかけるスクープ狙いのマスコミ。真犯人の究明を求める被害者遺族。トラックが信号を無視して突っ込んで来たことも、夜道で刃物を持った人間に襲われたことも一度や二度ではない。
俺の姉は、義兄は――つまりこいつの両親は、そんな生活に参ってしまっていた。
果たして彼らを罵ることが誰にできるだろう。そしてそれは、稀有にだってできやしなかった。
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