26: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/25(日) 02:01:24.05 ID:zKrhlsv70
親からも親族からも見離されたこいつを俺が引き取ったのは、大学四年目のことだ。引き取ったといっても大したことじゃない。どこにも行き場がないこいつが不憫に思えて、どうせ一年バイトと卒論しかないのだから、寝床くらいならと匿ったに過ぎない。
半年経たずに結局当局の人間が陣内崎へと連れて行ってしまった。だから、実質的に一緒に暮らしたのは、四ヶ月ちょっとの間だけだ。それをどうにもこいつは多大な恩を受けたと思っているようなのだった。
まぁ、確かに何度も死にそうな目にはあったが……。
もう二度と会うことはないと思っていたのだが、まさか数年を経て、陣内崎で雇用される関係になるとは。
意外ではあったが、けれど現状に俺は生憎と満足しているのだ。好きな女を守るだなんて、それは随分とハードボイルド的じゃあないか。
荒んだところもある女だけれど、狂った人間ばかりのこの陣内崎において、稀有はまだだいぶマシなほうだ。
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