33: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 20:41:00.77 ID:5UUNa7QZ0
「そうでしょ?」
「……ああ」
「どうして?」
「それは……」
プロデューサーは言葉を濁す。
「無理じゃないと思うさ」
「私が提案したとき、プロデューサーはっきり無理って言ったじゃん」
「あのときは、そりゃ……」
プロデューサーは撤回するわけでもなく、否定もしない。煮え切らない態度に、私は少し腹が立った。
「なんで無理って言ったの。なんで無理って決めつけたの」
「決めつけたわけじゃない。今回の企画は新しいユニットを探すためのもので――」
「そういうのは聞きたくないよ」
くみちーがプロデューサーに詰め寄る。
「私達が納得すると思ったの? 企画書に書かれた言葉を並べれば素直に引き下がるって」
「……」
「そんな訳ないでしょ。貴方はみんなのプロデューサーなんだから。私たちを納得させてよ。未央にあんなことを言った理由を、教えて」
「ねえ、プロデューサー」
私はつとめて静かに口を開いた。
「理由があるんでしょ? どうして無理って言ったのか。だって、ちょっとした提案を頭から否定するなんて、プロデューサーらしくないもん。その理由を聞きたいんだ、私」
嘘いつわりのない、私の思いだった。事務所にくる道中で考えたことだ。
私たちアイドルとプロデューサーは、同じ場所にいるようで、少し違う場所にいる。
その少しの距離が、見えている世界を一変させる。
私の世界を、私からしか見ていなかった。でもくみちーに言われて気付けた。
同じ景色を見ていても、私とプロデューサーでは見え方が違うことに。
きっとそれが、断った理由に繋がっているはずだ。
だから、それを教えてほしかった。
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