70: ◆A95oCT.s2k[sage saga]
2017/06/18(日) 20:36:45.64 ID:/+LAMdvF0
「……それ以上はまだ、言わないでくれ、頼む」
「…………ヒッキー……」
……このまま、感情のままに由比ヶ浜の“その言葉”を聞けばどうなる。
そして感情のままに“その言葉”を返したらどうなる。
ここで、もしも好きだと告げたらどうなる。
今見てるこの景色は、夢のように消えてしまうんじゃないだろうか。
俺みたいな奴と付き合ったとして、それはきっと由比ヶ浜にとって重荷でしかならない。
きっと……いや、確実に俺は、由比ヶ浜に依存する。
今の由比ヶ浜を形作っている関係よりも、俺のそばにいて欲しいと、おこがましくも思ってしまう。
こいつは優しいから、きっと、そんな俺にも合わせてくれると思う。
でも、そんな俺に、由比ヶ浜もいつか疲れを感じてしまう。遠からず、そうなってしまう。
……俺の為にこいつがそんな苦労をする必要がどこにある。
なら、今はその言葉を聞くわけには行かない。
その言葉の持つ意味の先にあるモノを予測した上で、言葉を紡ぐわけには行かない。
――『君は理性の化け物だね』
不意に、いつの日か聞いた陽乃さんの言葉が頭を過る。
ああそうだ、理性的で何が悪い、冷静になって何が悪い。
感情に任せて好きな人を傷付けられるほど、生憎俺も子供じゃないんだよ……。
だから、せめて……今はまだその思いを告げるわけに行かないのなら……せめて……。
83Res/95.56 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20