71: ◆A95oCT.s2k[sage saga]
2017/06/18(日) 20:39:58.91 ID:/+LAMdvF0
「ヒッキー…………」
「由比ヶ浜……」
由比ヶ浜の腕を振り解き、俺は言葉を続ける。
「今は……これで勘弁してくれ」
そう言いながら、俺は由比ヶ浜に左手を差し出す。
その手を両手でそっと掴み、どこか納得したように、由比ヶ浜は言葉を続ける。
「……うん、今は……ね」
友達以上とでも言うべきだろうか。だが、今はこれでいい。
焦ることなく、ここから始めたっていいだろう。
「でも、やっぱりだめ」
そう言うと今度は掴んだ手をそっと抱き寄せ、由比ヶ浜が俺の腕に抱きついてくる。
「お前な……」
「告白させてもらえなかったんだし、これぐらいは許してよ……」
「……まぁ、いっか」
「いつか……ヒッキーが大丈夫になったらさ……ちゃんと言わせて、私の気持ち……」
「……ああ、いつか……な」
決心がついたら、伝えよう。
由比ヶ浜の言葉か俺の言葉か。どちらが先になるのかは分からないが。それでも……。
由比ヶ浜が一番言いたくて聞きたかったその言葉を、俺は……。
夕日に影が映し出される。
影はしばらくの間、重なり続ける。
そして、俺と彼女は変わっていく。
臆病な自分に傷付きながら、そうやって変わる自分に戸惑いながらも。
――――俺と彼女は一歩づつ、確実に、大人になっていく……。
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