4: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/13(火) 23:59:39.61 ID:5NDUzJbF0
徐々に彼女との距離が近付くにつれて、その姿が鮮明になってくる。
見たところ彼女の風貌は、俺と同年代くらいに若かった。いくら元日とはいえ、こんな時間にひとりで人気のしない路地にいるのも危ないんじゃないかと思いもする。
すると、彼女と目線が合ってしまった。若干の気まずさを覚えて、すぐに目を逸らす。
5: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:01:33.36 ID:bk9mFZZ70
「あ、あの!」
振り絞るような声が聞こえる。
寒そうな手は、かたく握りしめられている。
6: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:02:45.71 ID:bk9mFZZ70
聞き覚えがあっただけに、心臓が止まってしまうくらい驚いてしまった。
7: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:04:20.47 ID:bk9mFZZ70
突然のことで、まったく声を出せなかった。
何度かその場で呼吸をして、平静を繕うのが限界だった。
「……」
8: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:05:24.30 ID:bk9mFZZ70
「……久しぶり、だね」
「ああ、久しぶり」
お互いに、相手の出方を探るようにして立っている。
9: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:06:05.83 ID:bk9mFZZ70
「よかった。すごく懐かしいね。何年ぶりかな」
「高校から別だから、五年と少しになるかな」
俺に声をかけてきたのは、俺の幼馴染だった。彼女とは実家が近く、子供の頃はよく遊ぶ仲だった。
10: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:07:07.01 ID:bk9mFZZ70
「どうしたの? ぼーっとしてるけど」
彼女が心配そうに顔を覗き込んでくる。
ああいや、と言いながら首を振る。
11: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:08:15.90 ID:bk9mFZZ70
「そうだよ。前はけっこう短かったのに」
「うん。実は伸ばしてたの。ばれちゃったかあ」
おどけたように彼女が笑う。その様子につられて、俺も笑ってしまう。
12: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:09:42.09 ID:bk9mFZZ70
「もしかして、お前も初詣に?」
「え、うん。そうだよ」
「じゃあ、よかったら一緒に行かないか」
13: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:10:18.37 ID:bk9mFZZ70
「君は大学生……進学してるよね?」
「ああ」
「もう二十歳も越えちゃってるし」
14: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:11:22.99 ID:bk9mFZZ70
「二十歳といえばお前、覚えてるか、あの約束」
そう言うと、暫く考え込む素振りを見せてから彼女が答えた。
「ああ、小学生くらいの時の、大人になったら結婚しようねってやつ?」
28Res/12.88 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20